さくら　キライ

インドネシア研修生のK君、以前書いたように紅葉が気持ち悪く
苦手だと言っていたが、実は、桜もなんだそうで。

桜の木は、普通に紅葉より見る機会が多く、開花時期に一斉に
咲くのが、やはり気持ち悪いとか。

「何で？キレイじゃん」と言うと、あの淡いピンク色の花が、
どうもダメらしい。

桜の木というのは、普段は地味めで、木肌もザラザラというか、
カサカサな感じなのに、春になるとパーッとピンクを咲かせる
というのが、彼の中ではありえない感じらしい。

前に、K君の将来の夢を聞いたことがあった。

彼は母国でレストランのボスになりたいと言った。

コックとウエイトレスを雇うと言い、自分がオーナーだと。

で、店の名前は「SAKURA」にするというのだ。

その頃は、彼が桜嫌いだとまだ知らなかったので、夢がかなうと
いいねぇ、なんてことで話は終わったのだ。



ある日、日本の観光客が彼の地インドネシアの辺境でSAKURAと
いう飲食店を見つけた。

つい、うれしくなって店に入り食事をする。

オーナーであるK君が姿を見せたので、観光客は期待をして店名の
由来を聞くだろう。

K君は、日本語で答える「日本の桜からです」と。

観光客は、うんうんとうなづき、きっと感動するだろう。

続けてK君は言う「でも、私は桜は嫌いです！」



・・・「それはないと思うぜ」と言うと「そうですね、ははー」
と、苦笑いするK君であった。